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ナイジェリア

ナイジェリアはアフリカ大陸の西海岸に位置し、アブジャが主要都市の国です。国内には36の州があり、各州で英語、ヨルバ語、イボ語、フラ語、ハウサ語、エド語、イビボ語、ティヴ語など多くの言語が話されています。ガブリエルの出身地であるベニン市は、エド州の主要かつ最大の都市で、かつては王国として知られていました。早婚、高い出生率、避妊による家族計画の普及不足などからナイジェリアの人口は1960年代初頭から急速に増加しており、2020年現在で約2億914万人に及びます。これは、人口が多い国や属国の第7位にランクインするほどの多さです。

ナイジェリアのペンテコステ派教会 (Premium Times)

この国では主に2つの宗教があり、それがまた分裂を生んでいます。ナイジェリア国民の半分はイスラム教徒、そして残りの半分はプロテスタントとカトリックのキリスト教徒です。このナイジェリア人の宗教と信仰の違いは、大統領や政府に対する見方にも違いをもたらしています。ガブリエルの宗教は、カトリックのペンテコステ派と関係が深く、イエス・キリストとの具体的な出会いをより重視するカリスマ派のキリスト教の宗派です。

この国は今日に至るまで西洋文化の影響を強く受けており、またナイジェリア文化に対する西洋の関心も高まり続けています。映画や音楽などのポップカルチャーから文学などの教育まで、この国は西洋文化の多くの面で影響を受けています。また、現在教育や日常会話には英語が公用語として採用されています。

ナイジェリアでの西洋的な教育 (Legit)

ナイジェリアの「西洋化」は、過去のイギリスの植民地支配の影響とナイジェリア自体の植民地支配まで遡ります。植民地時代、イギリスはナイジェリアの原住民が当時の西洋の価値観の優位性を受け入れるよう西洋的な教育を導入しました。イギリスはこれを「ナイジェリア人に西洋の宗教と文化的覇権を培う」ことによって行なったのです。ナイジェリアの西洋化は、この国の多くの文化や言語を消滅させたと同時に、当時の極端な文化的慣習(双子の殺害、奴隷貿易ビジネス、カースト制度など)の続行から多くのナイジェリア人を救いました。今日、子供たちは西洋の文化や教育を受けて育っており、ガブリエルもその影響を受けて育ちました。現在、ナイジェリアでは多くの伝統が失われつつありますが、西洋の影響と文化にうまく適応しています。

ボコ・ハラム

西洋化は文化面でナイジェリアに大きな影響を与えた長い歴史がありますが、ボコ・ハラムは脅威とみなしています。ボコ・ハラムとは、直訳すると「西洋の教育は禁止されている」という意味で、聖戦運動を通じて地域のイスラム化を目指す組織です。ガブリエルにとって脅威であると共に、彼の家族やナイジェリアの多くの人々がとてつもなく恐ろしい出来事を経験している原因でもあります。ボコ・ハラムのテロ活動は2000年代初頭にナイジェリアで始まり、ベナン、カメルーン、チャド、ニジェールなど近隣諸国にも波及してきました。この地域紛争は、何百万人もの人々にとって悪夢となっています。テログループは当初から自爆攻撃を仕掛け村を占拠・破壊したり、農民を殺害してその妻を強姦したり、援助関係者をほぼ毎月のように殺害したりしてきたのです。最も悲惨な事件の一つは、2014年に彼らが行った200人以上の女子学生の誘拐事件で、国際的に大きく問題になりました。ボコ・ハラムの活動により、2011年5月以降、37,500人以上が殺害されました。また、ナイジェリアでは200万人以上、近隣諸国では68万人以上が避難生活を送っています。

ボコ・ハラムの活動により被害を受けた地域 (UNHCRより作成)

ボコ・ハラムの致命的な脅威のもと、不安と危険に満ちた生活を送っている難民はガブリエルだけではありません。この地域の終わりのない紛争は、難民危機やその他多くの問題を引き起こしています。ナイジェリアの難民危機は、2020年で7年目に突入しており、ボコ・ハラムによる攻撃の結果、難民は食糧難、栄養失調、生活困窮に陥っているのです。ナイジェリア政府は、拉致被害者を救うため何度もボコ・ハラムとの交渉を試みてきました。その結果、多くの地方からテロリストを追い出すことに成功していますが、その成功はテロリストの近隣地域への活動拡大を許すこととなり、政府内の腐敗によって彼らはさらに力を得て、利益を得ています。

多くのナイジェリア人、特にボコ・ハラムの被害に遭った人々にとって、ナイジェリアは決して安全な国ではありません。多くの人々が、家を失い、難民となるなど、悲惨な脅威にさらされているのです。ガブリエルを含む被害者たちにとって最も不幸なことは、彼らの未来がボコ・ハラムの手に委ねられており、それがいつまで続くのか誰にもわからないということです。

アメリカ元大統領夫人による拉致された女学生の救援運動 「#私たちの女の子たちを返して」 (DW)